伊藤眞前理事長を悼む

2024-09-17

伊藤眞日本フンボルト協会(HGJ)前理事長は、現職理事長をお務めのまま、2024年5月17日67歳にて召天されました。ここに、謹みまして哀悼の意を表させて頂き、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

昨23年6月のHGJ年次総会では、ここ両三年通例となった対面・リモート併用会議でしたが、大変お元気そうに、いつもの安定感にあふれた見事なご差配にて、合同理事会、総会、そして懇親会全体を取り仕切られました。しかし、その直後、病魔に侵されて居られることが判明し、加療に入られました。同年11月に開催されたHGJ・Zoom講演会では、いつも通り理事長ご挨拶を為され、Zoom出席者の誰も、先生のご病気には気付きませんでした。その半年後という、余りにも早いご逝去であられました。無念の極みにございます。

1984年に学習院大学から学位ご取得後、福岡大学ご赴任を経て、1991年に筑波大学に着任されました。1997年から一年間、HumboldtianerとしてMannheim大学ドイツ語研究所にて在学研究為され、ご帰国後、当時の東日本フンボルト協会に加入され、2001年から2011年までは常務理事を、そして2011年から2013年の東西協会統合まで副理事長を務められました。統合後の日本フンボルト協会では、本務校にて筑波大学副学長の激職を務められつつ、2017年副理事長、そして2019年から2期理事長をお務めになり3期目の半ばでした。協会の日常的運営は固より、分けても、2019年度設立の日独共同研究奨学金の準備、募金から実装まで、全てに亘って専心され、伊藤先生の物心両面にわたる多大なるご尽力無かりせば、今日の充実した日独学術交流は実現致しませんでした。

教育者、そして研究者としての伊藤先生は、語彙学を専門とされ、日独慣用句比較研究を中心に研究展開されました。研究書として、ご著作 Deutsche und japanische Phraseologismen im Vergleich、そして、„Phraseologie aus kontrastiver Sicht. Entsprechungen und pragmatische Einschränkungen der deutschen und der japanischen Phraseologismen“、„Funktion der Paarformeln – ein Modellierungs-versuch –“、「日独慣用表現に関する一考察」、「言語の具象性・比喩性・受動性 - 日・独慣用句をめぐって -」をはじめとした多くの論文群を公刊されました。ドイツ語教育の分野では、『デイリーコンサイス独和・和独辞典』、『初級者に優しい独和辞典』、『ベーシッククラウン独和・和独辞典』等の編纂に従事されたのみならず、『読んでわかるドイツ語』、『もちろん! ドイツ語』、『ドイツ語、次のステップへ! 』等のドイツ語教材を提供されました。先生のこうしたドイツ語研究・教育への熱意を思うとき、かの手塚富雄先生の御孫であられたことを忘れることはできないでしょう。

こうしたドイツ語分野でのご業績、そして日本フンボルト協会での日独学術交流へのご尽力を通じて、伊藤眞先生のご貢献は、私たちの心に末永く刻まれることでしょう。先生のご遺志を継いで、HGJを通じた日独交流がさらに発展するよう、協会全体として今後も努力を重ねて参りたいと存じます。Herr, gib ihm ewige Ruhe!

2024年8月26日
日本フンボルト協会 副理事長 縣 公一郎

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