日独学術交流雑記帳

高田敏先生のドイツ連邦共和国功労勲章一等功労十字章受賞に寄せて

2014-09-19

Prof. Takada, IMG_5978
「(C) GK Osaka-Kobe」

高田敏先生のドイツ連邦共和国功労勲章一等功労十字章受賞に寄せて
京都産業大学教授 初 宿 正 典(Masanori Shiyake)

この度、フンボルト会員で大阪大学名誉教授の高田敏先生が、法学分野などでの日独関係の発展にたいする長年にわたる顕著なる功労に対して、ドイツ連邦共和国功労勲章一等功労十字章(Verdienstkreuz I. Klasse)が授与され、去る本年7月24日に、ヨアヒム・ガウク連邦大統領の名代として、インゴ・カールステン大阪・神戸ドイツ総領事から、ご家族や同僚・門下生が同席する中で、先生にこの栄誉ある勲章の受賞が伝達された。私自身は、太閤園淀川邸において行われたというこの伝達式には出席できなかったが、先生のこの栄誉ある勲章の受賞の報に接して、一言、拙いながらお祝いを申し上げたい。
高田敏先生は、1930(昭和5年)年3月29日に兵庫県にお生まれになり、旧制姫路高校から京都大学法学部に進まれ、1953年春にご卒業後、同大学大学院に進学して、故杉村敏正先生のご指導を受けて行政法学の研究の道に進まれた。1956年には広島大学政経学部に就職されたが、その間、1964年から2年間、フンボルト財団留学生としてハイデルベルク大学に留学されて、主として行政法学の大家エルンスト・フォルストホフ(Ernst Forsthoff, 1902-74)の下で行政法学の研究に勤しまれた由である。帰国後の1967年春に大阪大学法学部助教授に招聘され、2年後の1969年に同学部教授になられて以後、1993年3月に定年をお迎えになったが、その後も引き続き大阪国際大学、さらに2004年から2008年まで近畿大学法務研究科で教育と研究を続けられ、84歳におなりになった現在も、精力的にご活躍である。
2006年に先生の古稀を記念して編まれた論文集『法治国家の展開と現代的構成』(有斐閣刊)の末尾に付された先生の主要著作目録を一覧しても分かるとおり、高田先生は、公法学とりわけ行政法学の基本的テーマである法治国家論・法治主義論・法治行政論に集中してこられたといってよい。そのご業績は、とりわけ「法の支配」(Rule of Law)概念の関わりで、憲法学界に大きな刺激と影響力を与えられたことは、いまさら言うまでもないところである。先生のご業績は、すでに以前にも『社会的法治国の構成』(信山社、1993年)をはじめとする書物として公刊されているが、最近でも、上記テーマに関わる主要論文が750頁に及ぶ論文集『法治国家観の展開』(有斐閣、2013年)としてまとめられた。また、その他のテーマについて書かれたご論文も近々まとめられる由である。
私自身、私が京都大学入学以来の指導教授である阿部照哉先生(昭和4年7月生まれ)が高田先生と同学年であったこともあって、まだ私が若輩の身であった頃からとても親しくしていただいており、そのご縁もあって、1994年には、先生との共編という形で近代以降のドイツの主な憲法典の邦訳を出版し(『ドイツ憲法集』信山社刊)、現在では第6版(2010年刊)まで版を重ねているが、この憲法集の末尾にある先生の手になる「あとがき――ドイツ憲法と日本」には、版を重ねるたびに新たにその時々の現状に即して補筆しておられ、その旺盛なる活力と研究力に感銘を受けるばかりである。
高田先生が日独公法学の学術的交流の促進のために多大な貢献をされたことについては、阪大のホームページなどでもご紹介がされているとおりであるので、改めてご紹介することは控えるが、先ごろ(2013年)、先生のご子息の高田篤教授(大阪大学法学部)が、日独の相互理解の促進に貢献のあった日本人学者に授与されるフィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞を受賞されたこともまだ記憶に新しく、この度の高田敏先生の受賞と併せて、親子二代でドイツからこうした栄えある賞を受けられたことは、まれにみる快挙であり、同じ公法学研究者の一人として、まことに誇らしい限りである。
今後も、先生がご健康に留意され、お元気で引き続きご活躍され、後進をご指導ご鞭撻下さることを切に願うばかりである。   (2014年9月16日)

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