日独学術交流雑記帳
2018年フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞の受賞について
2018年フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞の受賞について
京都大学 髙山 佳奈子
日独両国の多数の方々のご支援により、第40回フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞を受賞することができました。同賞は、優れた研究成果をあげるとともに両国の学術交流に貢献していると評価された40代までの日本人研究者1名に毎年ドイツ連邦共和国大統領から授与されます。日本フンボルト協会会員からも、これまでに多数の受賞者が出ています。
受賞式は2018年6月28日にベルリンのベルヴュー宮殿で開催され、シュタインマイヤー大統領(写真)からの授与を賜りました。フンボルト財団パペ理事長や八木ドイツ大使を始めとする要人の方々のほか、ドイツでの受入教授であったトーマス・ヴァイゲント教授とウルフリート・ノイマン教授にもお越しいただきました。
今回の受賞で主に評価されたのは、海外での公刊業績が多数に上ることや、国際学会・集会での活動、日本の中央・地方政府の審議会における政策立案活動、人権問題への取組みなどです。私の主たる専門分野は犯罪論の基礎研究ですが、フンボルト奨学研究員として国際刑事法やヨーロッパ刑事法の研究を開始し、近年では最先端科学技術の法規制や経済犯罪対策などにも取り組んでいます。
もっとも、活動の機会に恵まれていることは、専門分野における女性研究者が少ないことの裏返しでもあります。その意味で、自分の受賞は、まだ女性の活躍がわざわざ推奨されなければならない時代の過渡期の現象であると思っています。また、他分野も含めた学界の諸先輩方のご活躍を見ますと、私よりももっと受賞に値する方々がたくさんおられ、必ずしも推薦を受けてこなかったことがうかがわれます。同賞の認知度を上げる必要があります。
さらに、同じ文科系でも、経済学や政治学の分野では、国際的に顕著な業績を上げている比較的若い日本人研究者もおられ、それらの方が活躍するアメリカやイギリスのトップレベルと比べると、法学研究は相対的にまだまだ低調である印象を受けます。
受賞式における自分のスピーチでは、大学への交付金や助成金が大幅に削減されてきていること、国会では質問への政府からの回答が得られないこと、マスメディアへの圧力が国連から指摘されていること、一定範囲の人の犯罪が訴追されないことなどを述べ、学術に力を入れる政策の国際的な必要性を訴えました。
Photo: Humboldt Foundation/David Ausserhofer